会社を設立する際、決めることの一つに「決算月」があります。
法人であれば「決算月」を自由に決めることができるのですが、日本では3月や12月決算が比較的多くなっています。

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経営者
なんとなく3月決算の会社が多いから・・・

・・・などという理由で決めてしまっては損をすることになるかもしれません。
設定した「決算月」によって資金繰りの問題を抱えることになったり、節税の面で不利になってしまう場合もあります。

今回は自分の会社にとってベストな「決算月」を決めるポイントをご説明したいと思います。

法人の「決算月」はどのように決めるのか?

個人事業主は1/1~12/31が会計期間と決められていますが、法人は「決算月」を自由に設定することができます。

法人の「決算月」を決めるルール

法人の決算月を決めるルール

 会計期間が1年を超えなければ何月でも良い
 「決算月」の最終日である「決算日」を月末以外の日付にすることも可能

「決算日」は月末以外でも可能ですが、決算処理の手間などもあり月末を選択している会社が多いです。
ちょっと前は20日決算などという会社も見受けられましたが、実務的には煩雑になることが多いので現在は月末決算が主流です。

なぜ3月や12月決算が多いのか

自由に決められるのに日本の会社ではなぜ3月や12月決算の会社が多いのでしょうか?

3月や12月が多い理由

 官公庁と取引が多い場合は、官公庁の会計年度(4/1~3/31)に合わせている
 上場企業は総会対策で他の企業と株主総会が重なるように3月にしている
 欧米では12月決算が一般的な為、海外のグループ会社などと合わせている
 個人事業が法人化した場合にそのまま12月にしている

それでは、自分の会社にとって一体いつを「決算月」にすれば良いのでしょうか?
なんとなく3月・・・などと理由なく決めるのではなく会社の実情に合わせて検討する必要があります。

ではベストな「決算月」を決めるポイントをご説明します。

「決算月」を決める5つのポイント

「決算月」をいつに設定すれば良いかは会社ごとに違ってきます。
自分の会社にとってベストな月を選ぶ5つのポイントをご説明します。

ベストな月を選ぶ5つのポイント

①繁忙期を避ける
②「決算月2か月後」は資金余裕のある時期に設定する
③在庫の少ない月を選ぶ
④消費税の免税期間を考慮する
⑤会計事務所の繁忙期を避ける

それぞれのポイントをみていきましょう。

繁忙期を避ける

繁忙期を避けるのは以下のような理由があります。

繁忙期の業務と決算業務が重なってしまう

まず、単純に忙しいからです。

決算日から2か月後の申告期限までは決算業務を行わなければなりません。
ただでさえ忙しい時期に、棚卸をして在庫を把握するなどの決算業務が重なってしまいます。

繁忙期は会社の成長にとって大切な時期

繁忙期は売上が伸びる会社の成長にとって大切な時期です。
決算業務のために本来の業務がおろそかになり、会社の成長を妨げては大変です。

資金繰り圧迫の可能性がある

資金繰りの面からも繁忙期は避けた方が良いでしょう。
繁忙期は売上も増え、それに伴って資金の動きも大きくなります。

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経営者
売上げが増え、回収されないまま税金の納期限になってしまった・・・

最悪そんな事態になってしまう可能性もあります。

決算対策がよめない

「決算月」に繁忙期が重なると、有効な決算対策をとることが難しくなります。

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経営者
期末に売上がたくさん上がり、利益が増え税金も増えそうだ。
しかし、すぐ決算なので何の対策もできない・・・。

期末の繁忙期で予想以上の売上が出てしまっては、今までしてきた決算対策もあまり有効ではなくなってしまいます。

繁忙期は期首に持ってくる

繁忙期は期末を避け、事業年度の初めに持ってくることをおススメします。

繁忙期は期首に

期末に繁忙期があると納税予測は難しくなります。
しかし売上の多い月からスタートすれば、節税対策やその後の事業運営も余裕を持って取り組むことができます。

「決算月2か月後」は資金余裕のある時期に設定する

原則として決算月の2か月後には申告・納税しなければなりません。
資金繰りが苦しい時期と納税の時期が重ならないように注意しましょう。
以下のような時期は避けた方が良いでしょう。

決算2か月後を避けるべき時期

従業員へのボーナス支給時期
仕入や経費の支払いが多い月
その他会社で大きな資金支出がある時期

在庫の少ない月を選ぶ

「決算日」には、棚卸をして在庫を確認しなければなりません。
在庫が多い小売業や製造業などの業種では大変な業務となります。
在庫が増える時期はできれば避けたいところです。

また決算書に記載される在庫が多くなると金融機関などからの評価に影響する場合があります。

消費税の免税期間を考慮する

設立1期目の長さによって消費税が免税になる期間が変わってくる可能性があります。

設立1期目を長く設定する

資本金1,000万円未満で設立する場合、要件に合えば最初の2期は消費税が免税となります。
できるだけ1期目が長くなるように「決算日」を設定すれば丸2年消費税が免除されます。

例外もあるため、詳しい内容については弊所までご相談ください。

会計事務所の繁忙期を避ける

2月3月は所得税の確定申告、5月は3月決算の申告業務があり会計事務所にとっては繁忙期となります。
繁忙期は他の時期と比べ、どうしてもマンパワーの関係上対応が遅くなってしまう可能性も否定できません。その辺りの事情も検討する際に考慮されると良いかもしれません。


その他、メインの取引先の「決算月」との関係など、それぞれの会社個別の事情についても検討してみましょう。
以上のようなポイントに気を付けて、自分の会社にとってベストな「決算月」を設定しましょう。

「決算月」は変更することができる

「決算月」は後から変更することが可能です。

よく考えないで「決算月」を決めてしまった場合や、色々検討して決めたものの実際に事業を開始してみると業務や資金繰りの都合で「決算月」を変更した方が良い場合も出てくるかもしれません。

「決算月」は比較的簡単に変更することが可能です。
変更するには登記の変更などは不要で以下の手続きとなります。

決算月変更の手続き

 株主総会で決算日変更を決議し、議事録を作成する
 異動届を税務署、県・市町村へ提出する

ただし、むやみに変更して良いかと言えばそうではありません。
変更するには手間もかかりますし、経営上変更が必要な場合に行いましょう。

「決算月」の決め方・まとめ

業種や繁忙期などの事情で、会社にとっての最適な「決算月」は変わってきます。
何月に設定すれば経営上有利なのか?
自分の会社の実情を検討して「決算月」を決めることが大切です。