今年は新型コロナウイルスの影響で試験がどうなるのか心配でしたが、無事終わったようですね。良かったです。

そして受験生の皆様、本当にお疲れ様でした。

税理士試験は税法の理論を丸暗記するという苦行を乗り越える必要があります。
その量と難しさは安易に受験に足を踏み入れた人を震撼させます。そしてこの苦行が辛すぎて、絶望して諦めてしまう人も後を絶ちません。
ただ合格している人もいることから、全く無理なことを強いられているわけではありません。
今回は税理士試験の勉強の中で最もツラい作業である「理論暗記」について、自分なりにやってきて感じている効率的な学習方法をお伝えさせていただきます。

あくまでも自分が効率的と感じた方法なので、参考になる部分もあればそうでない部分もあるかもしれません。そこはご自身でご判断ください。
しかし自分が試行錯誤していろいろ試してこの方法が一番いいと感じた方法ではあります。
また税理士試験だけでなはく、ほかの一般的な学習全般にも応用可能のはずです。
是非参考にしていただければと思います。

まず最初に覚えること

理論暗記というとどうしても気合を入れて最初から順番に覚えていく人もいると思います。
最終的に全部覚えていれば問題ないのですが、もっと効率的に覚える方法があります。

それが理論全体をツリー型の図に変更して題名や項目を覚えていくというものです。

詳しくは下記に示しますが、まずは全体像の把握題名・項目などを完全に覚えます。
題名を完璧に覚えることは実は正しい用語を覚えるのに役に立ちますし、あちこちに散らばった理論のつながりに気づくこともできます。
そしてここをまず最初に完璧覚えれば、そこからさらに深堀していくことで確実に暗記していくスピードはアップします。
そして思い出すときもツリー型の図で覚えていればすぐに思い出せます。

では具体的に例を示しながら説明します。

題名と項目をツリー型の図に変換する

下記は少し古いかもしれませんが、自分が受験していたときの相続税法の理論サブノート(大原出版)の一部です。
目次には以下のように記載されています。

これを以下のように変換します。

紺色の部分が文字だけの目次を図に変換した部分となります。
その下のオレンジの部分はさらにその理論の中に入っている項目となります。
このように少しずつ下に掘り下げていきます。
実際はさらに1-1[1]納税義務者の中に「居住無制限納税義務者」・「非居住者無制限納税義務者」・「制限納税義務者」・「特定納税義務者」などが追加されていき、その項目の中に実際の理論文章が入ってくるということになります。

一番上から少しずつ項目を広げて、掘り下げていき全体を覚えていきます。
理論全体の項目を図にしてそれをまずは暗記してしまいます。

これで理論暗記するための枠が完成します。

これが完成したらこの図を基本として実際の文章を暗記していきます。
常々この図を基に理論を覚えて、その覚えた理論を確認していくことで、ただ文章を覚えていくよりも断然覚えやすくなり、何より確認がしやすくなります。

回り道のように思うかもしれませんが、完全に頭に定着させるにはとても役に立つ方法です。

是非お試しいただければと思います。

具体的な文章の覚え方

ここからは具体的な文章の覚え方を複数紹介していきます。
いろいろな方法や手段はありますが、すべてに共通することはその理論の内容や意味をしっかり理解するということです。
意味は分からないけど暗記だけは得意という人もいるかもしれませんが、今の税理士試験はそんなに甘くありません。
設問に対してどの理論のどの部分を書けば正解なのかは、意味と内容をしっかり理解していてこそ正解を導くことができます。
意味と内容をしっかり理解してから文章を暗記するようにしましょう。
では具体的暗記方法を紹介していきます。

少しずつ確実に覚える

「少しずつ確実に覚えていく」

基本的にはこれが一番早いです。
夢も希望もありませんが、これが遠回りなようで実は最も確実かつ早い方法です。
最初は大変ですが、慣れると簡単に覚えられる文章もドンドン増えてきます。
この事実は合格者は全員知ってますが、勉強を始めたばかりの人には信じがたいことかもしれません。でも本当です。信じてください。

まずはこの事実に向き合うところからすべては始まります。

暗記をしていると覚えやすい文章覚えにくい文章があります。

覚えやすい文章は覚えるまで繰り返す回数は少なくて済むかもしれません。
でも覚えにくい文章はその何倍・何十倍も繰り返さなければ覚えられません。

覚えられない文章は覚えるまで何回でも繰り返し覚えられるように回数を重ねましょう。
5回で覚えられる文章もあれば、100回やっても覚えられない文章もあります。

少しずつ、確実に覚えていきましょう。

「相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの」

という文章を覚えようとしたら、
相続又は遺贈、相続又は遺贈により 相続又は遺贈により財産を取得
相続又は遺贈により財産を取得した個人 という感じで段階的に覚えていきます。

この繰り返しが最も早いことは間違いありません。

五感をフル活用する

理論を覚えるためには五感をフル活用する必要があります。
本来の五感とは少し違いますが、税理士試験の理論暗記にも人間の持つすべて感覚を利用した方が暗記しやすくなります。五感をフル活用する方法をお伝えします。
理論暗記用の自分なりの五感は、「目・頭・口・耳・手」です。
本来五感というとは「頭」ではなく「鼻」なのだと思いますが、そこは試験勉強ということで一番大事な「頭」をいれて説明させていただきます。

目・見て覚える

これは目を使い見て覚えることです。
シャッターアイという見たものを一瞬で目に焼き付けられる特殊能力を持っている人もいるみたいですが、そこまでの特殊能力が無くても、何度も同じ文章を見ていれば記憶に定着してきます。
シャッターアイほどの効果は無くても、繰り返しで視覚的に覚えられるケースも多いです。
この後続きますが、頭に叩き込むにしても、口に出して覚えるにしても、手で書いて覚えるにしても目で見るのが最も基本的な作業になります。
基本+視覚的記憶ということで大事にしたい五感の一つです。

頭・頭の中で覚える

勉強しているのだから頭を使うのは当然のことですが、理論暗記という観点での頭の使い方は、とにかく頭の中で理論を回すということになります。
目で見て覚えた理論を今度は何も見ずに頭の中だけで暗唱してみます。
これにより理論はどんどん定着してきます。
わたし自身最も理論暗記に貢献したのはこの頭の中で暗唱だったと感じています。
時間さえあればとにかく頭の中で理論を回す癖をつけるようにしてください。
最初はすごく疲れますが、慣れるとこれほど効率のいい暗記方法はありません。
どこにいてもいつでもすぐに実行できることから、絶対に実践してほしい五感の使い方です。

口・しゃべって覚える

理論を声に出して音読するというのも記憶の定着に貢献します。
あちこちではできませんが、自宅や誰もいないオフィスなど声を出しても問題ない環境であれば声を出してしゃべって覚えるというのは有効です。
また聞いてくれる協力者がいれば、声に出して理論やその内容などを伝えて聞いてもらうのもいいと思います。
それから声に出した理論を録音しておくことで、次の耳で聞いて覚えるにつながります。

耳・聞いて覚える

耳で聞いて覚えるのも記憶の定着には有効です。
車や電車での移動時間はテキストを見ることができないこともありますが、音声であれば聞くことができます。
目や頭だけで覚えていると疲れてしまうこともあると思います。
そのような場合は音声を聞いて覚えるという方法も選択肢として有効でしょう。
聞き流すだけでも効果的だと思います。
自分でしゃべった音声を録音したものでもいいですし、理論の音声CDなども発売されています。
それらを活用して耳で聞いて覚えていきましょう。

手・書いて覚える

書いて覚えるのは実は最もオーソドックスな方法であり、机に向かう場合はこれが一番多い覚え方になると思います。
そしてその効果は間違いなく、多くの受験生がやはり書いて覚えるのが一番早いと言っています。
確かに書くのが覚えるのには最も有効なのですが、机に向かえる時間は限られています。
また書き過ぎると腱鞘炎になったりします。
せっかく理論を覚えたのに、当日腱鞘炎で解答用紙の記入が出来なかったら努力が水の泡です。
その効果は間違いありませんが、書くのは最小限にしてほかの五感を使う割合を増やしてあげるべきかと思います。

基本的にはバランスよく五感をフル活用していただくのがベストですが、これらの中から自分や自分の生活スタイルに合った方法を選択していただいてもいいかもしれません。

確認する方法

覚えた理論は本当に間違いなく覚えられているのか確認をしなければなりません。
そして確認作業自体が理論を覚える大事な時間となります。
何度も確認を繰り返すことで記憶も定着します。
覚えたか覚えていないかは一定の期間で計画的に行う必要があります。
確認の回数が多ければ多いほど合格の可能性は高くなります。

ではその確認はどのようにするのが効果的でしょうか?

確認する方法は主に「録音する」「書く」かのどちらかです。
頭の中で思い出すもの確認作業の一つではあるのですが、それが正解かどうかは覚えた理論を何かしらの形にして正解と確認しなければなりません。

録音して確認

覚えた理論を何も見ずに自分で声に出してみます。
それを録音して正解と確認していきます。
五感でいえば、口・耳・目を使うことになりまさに五感をフル活用する方法となります。

書いて確認

こちらはやはり最もオーソドックスな書いてみて正解と確認する方法です。
手で書く代わりにパソコンやスマホに入力して確認する方法もあります。
効率的ではありますが、やはり手に負担がかかるのであまり使い過ぎずに、録音と併用していきたいところです。
いざとなったら漢字が書けないということも起こり得ますので、手で紙に書くという確認方法はやはりオーソドックスであり重要であることは間違いありません。

ツールの使い方

試験勉強も専念している方であれば、ずっと机で勉強できるかもしれません。
しかし自分もそうでしたが、税理士試験は仕事をしながら挑戦している方がとても多いのが特徴です。
そうなると通勤時間や職場での空き時間などにいかに理論を覚えることができるかが勝負の分かれ道となります。
そこで重宝するのが勉強ツールです。
理論暗記のためのツールとその使い方を簡単に説明します。

クラウド・スマホをフル活用

まずはクラウドとスマホのセットです。
便利な時代となりました。
用意さえきちんとしておけばすべての情報にすぐにアクセスできます。
クラウドとスマホを駆使していつでもどこでも理論暗記できる環境を整えましょう。

ドロップボックス

まずはドロップボックスです。
クラウドサービスと言えばドロップボックスと言っても過言ではないほど有名です。
理論暗記に必要な理論の文章やテキストはデータ化して、すべてドロップボックスにアップ、いつでもスマホから確認できるようにしておきましょう。

エバーノート

こちらもドロップボックスと並ぶクラウドサービスの代表格です。
ドロップボックスがフォルダ形式なのに対して、エバーノートはメモの集まりのような感じです。
間違いメモ、重要な語句、間違いやすい漢字などどんどんメモしてアップいきましょう。
そして通勤時間や空き時間にスマホで確認できるようにしておきましょう。

グーグルキープ

グーグルキープはほとんどエバーノートと同じようなグーグル提供のメモアプリです。
両社の違う点はいろいろあるのですが、一番大きな違いはエバーノートがメモを種類ごとに管理する点で優れているのに対して、グーグルキープは種類分けなど気にせずどんどんメモを追加していける点かと思います。
個人的好みでどちらか一つを使ってもいいと思いますし、両方別々な使い方をしてもいいと思います。

メール

クラウドサービスを使うのもいいですが、それが面倒な場合は自分のメールアドレスに理論テキストを添付したり、間違いノートのように次々キーワードを付けながら送信してもいいと思います。
手で書くかわりに理論を入力してみて、あとでそのメールで確認するという使い方もできそうです。
Gメールなどでスマホで見られるようにしてくのは必須です。

紙のコピーやメモ

ちょっと時代遅れな感じはしますが、紙で持ち歩くのも実は意外と有効です。
ちょっとした一瞬の空き時間など、スマホで開くまでもないときなどホント一瞬の時間さえも大事したい人には実は最適のツールです。

理論の文章をコピーしてスーツのポケットやカバンに忍ばせておきます。
そして一瞬時間が空いたときに一文だけでも覚えるくせをつけていきます。
これにより超細切れ時間を最大限有効活用することができます。
また一瞬で覚える訓練になり、理論暗記のスピードも向上します。
理論のコピーや自分で作ったメモは最高の隙間時間活用ツールとなります。

一日の時間の使い方

これも専念している方にはあまり関係ない部分かもしれませんが、仕事や家事などをしながら勉強している人にとっては参考になるかと思います。
時間には特性があって勉強に適した時間とそれ以外の時間があります。
なるべく勉強に適した時間に勉強して、一日を有効に活用したいものです。

勉強する時間帯

これはやはり朝から午前中が適していると言えます。
なので朝出勤前に勉強していないというのは、それだけで合格から遠のいていると言えます。朝は必ず理論暗記をする時間を設けましょう。
そしてその日一日頭の中で回す理論を決めたり、ポケットに忍ばせる理論やメモの用意をするべきです。
この準備があるかないかでその一日に理論が覚えられるかどうかが決定します。
なるべく一日の前半は勉強できるように時間と生活を調整する必要があります。
逆に仕事が終わった後は、覚えた理論の確認など少し疲れていても可能な勉強を用意しましょう。
9時出勤で8時に家を出る場合は、4時や5時に起きて、少なくとも2時間程度は勉強してから出社すべきです。
逆に夜は早めに寝ることで疲れている時間帯を無駄に過ごさず、次の日の早朝へつなげることができます。朝型人間への転向は合格確率を格段に向上させてくれます。

勉強以外の時間帯

勉強する時間帯が決まると必然的にそれ以外の時間帯は勉強をした後になります。
一番疲れていない時間を勉強に充てて、そのあとその他の時間に充てることになります。
勉強中心の生活をするためには、とても理にかなっている方法だと思います。

また仕事中や家事の途中でも少し空き時間や休憩時間が生じることがあるはずです。
ここも理論暗記や確認ができる大事な時間となります。

前項で説明したツールを最大限活用して隙間時間も有効活用していただきたいものです。

睡眠を活用した理論暗記方法

これは本当に自分だけかもしれませんし、根拠は不明なのですが、

「夜寝る直前に理論を暗記して、その理論を起きたら確認する」

ということを繰り返していた時期がありました。
これをやるようになってから格段に理論の暗記が定着しました。
もしかしたら科学的な根拠があるのかもしれませんが、寝る前に覚えて朝確認するという睡眠を利用した暗記は効果が高いのかもしれません。

興味がある方はお試しください。

その他のテクニック

お伝えすべきことはだいたい書いたと思いますが、その他の細かいことで思い出したことを書いておきます。

理論暗記用教材

理論の暗記教材は専門学校によってその内容が少し違います。
有名どころでは、大原とTACがあります。
大原は「理論サブノート」、TACは「理論マスター」と呼ばれています。

これは出来れば二つ用意したいところです。

たまにですが、片方に漏れている理論や文章があったりします。
そこが出題されていしまえば、その年の合格はありえません。
基本となる教材はどちらかに絞るべきですが、もう片方もチェックしておく必要はあるかと思います。

また同じ内容でも文章の表現が少し違うことが結構あります。
この場合においてメインの教材の文章が覚えにくい場合は、簡単な覚えやすい文章の方を覚えるのもアリだと思います。
ただ文脈がおかしくなったり、意味が違ってしまう場合はマズいので十分注意が必要です。
どうしても覚えにくい場合は検討してみてください。

カッコ書きへの対応

理論暗記で苦労する原因の一つはカッコ書きの多さです。
カッコの場所からその中の文章をまた別に覚える必要があったり、意味が難解になるような表現となってしまうこともあります。
これは一回カッコ無しで覚えるという方法があります。その後、カッコの場所、カッコ内の文章を覚えるという感じで段階を踏みます。
また先ほどの理論教材の項目と重なりますが、見比べてみるとカッコを注意書きなどに変更しているケースもあります。
その場合は覚えやす方で覚えると余計なカッコ書きの文章を避けることができます。

最後に

いかがでしょうか?
完全に自分の方法でしたが、少しは参考にしていただける部分もあると思います。
是非参考にしていただき、なるべく早い合格を手にしていただきたいものです。