今回は昨年、先端園芸施設であるいちご農園「ソレイユの杜」を開業されました伊藤健司さんに、イチゴ栽培に対する思いや最先端の農園経営などについてお伺いいたしました。
とても興味深い内容となっていますので、是非ご覧ください。

いちご農園「ソレイユの杜」・開業までの経緯

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福田
ちょうど収穫期にお忙しい時期ですが、本日は宜しくお願い致します。
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伊藤
はい、よろしくお願いいたします。
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福田
まずは開業した理由や開業までの経過などを簡単に教えていただけますか?
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伊藤
わたしは世間一般的には「脱サラ組」ということになります。
開業前は全国展開の大手専門学校に23年間勤めていました。
安定したキャリアは捨てがたかったのですが、定年後も続けられる自分の仕事を作りたいという思いがありました。
それを叶えられるのは農業だと思い、この農園を開業することにしました。
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福田
それは思い切った決断でしたね。
しかも今までとは全く違う業種への挑戦ですから、その苦労は大変なものだったのではないでしょうか?
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伊藤
はい、そこは予想以上に大変でした。
まず業界用語が全くわからないわけですよ。
だから一から勉強するようなもので、とにかく毎日覚えることがあり過ぎて苦労の連続でした。
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福田
実際の開業準備はどのようにされたのですか?
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伊藤
開業前に研修施設でもある株式会社GRAの指導を研修生として受けていました。
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福田
GRAさんはITを駆使した先端園芸施設で有名です。
社長のお話を講演会でお聞きしたことがあり、すごい取り組みをされている企業だなと思っておりました。
そちらの指導を直接受けられるのは心強いですね。
実際その研修というのはどのようなものなのですか?
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伊藤
基本的な知識から実践までのすべてを一年間で教わります。
これまでにない最先端のIT農業スタイルのイチゴの栽培、設備・機器メンテナンス、選果技術、営農地選定やハウス建設ノウハウなどを学びました。
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福田
かなり濃い研修内容です。その研修を受ければ、基本的には開業できる知識と技術が身につくというわけですね。
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伊藤
一応そういうことになります。
その一年間の研修期間を経て「ミガキファマー」として2020年6月末に卒業、7月15日に個人事業主として開業しました。

いちご農園「ソレイユの杜」・開業について

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福田
無事研修を終えて開業できたわけですね。
おめでとうございます!
開業についても少し詳しく教えていただけますか?
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伊藤
開業した場所は、宮城県亘理郡山元町の東日本大震災の応急仮設住宅跡地となります。
開業後、9月中旬よりミガキイチゴの栽培を始め、12月中旬から本格的にイチゴの収穫が始まりました。
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福田
開業してみて苦労はありましたか?
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伊藤
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、建設会社、行政、メーカーや卸売業者との打ち合わせ等の機会が減ったことや、従業員採用など数えきれないほど多くありました。
その中でも一番苦労したことは、今まで農業に一切関わったこともなく、業界の仕組み・用語などが分からないことに戸惑い、一からキャリアを積み上げて行くことがこれほど大変なのかと悩んだ時期もありました。
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福田
直接現場で会って打ち合わせが出来ないというのは、慣れた相手であればなんとかなりそうですけど、これから開業するという時に慣れない相手とやりとりするのは不安だったと思います。
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伊藤
また、ハウス栽培とは言え自然が相手なので、当然思った通りにできないことも多々ありましたね。
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福田
そのあたりはどのように解決していったのですか?
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伊藤
研修先のGRAさんや先輩就農者のアドバイスを受けてなんとか頑張りました。
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福田
普通だと資金調達とか開業前に相談いただいた場合は、我々がお手伝いすることも多いのですが、今回は資金調達や経営計画はGRAさんの研修の方でサポートされていたので、あまりお手伝いすることがありませんでした。
それでも開業前からいろいろお話お聞かせいただいて良かったと思っています。
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伊藤
そうですね、福田さんに事前に相談して良かったことはいろいろありました。
あのような話は申告の段階で相談しても遅いんですよね?
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福田
そうですね、今回一番効果があった事前対策は、開業前にいろいろお話お聞かせいただかないと出来ないものでした。
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伊藤
やはりそうなんですね。早めに相談していてよかったです。
本当に助かりました。ありがとうございます。

いちご農園「ソレイユの杜」の設備について

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福田
この伊藤さんの施設で最も特徴的なことはやはり「先端園芸施設」であることかと思いますが、どのような設備なのか簡単に教えていただけますか?
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伊藤
「先端園芸施設」というのは、ハウス内の温度、日照時間などを最先端ITC(情報通信技術)で管理するというものです。
この設備により、イチゴにとって最も適した環境を自動で作り出すことが出来ます。
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福田
まさに匠の技とITの融合といった感じです。
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伊藤
長年のイチゴ栽培農家さんの経験値がデータ化されているので、わたしたち未経験者でもある程度効率よくイチゴを栽培することが出来ます。
また収穫量の予測や出荷予定なども管理できるので、売上の予測も立てやすいです。
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福田
今後は農業もこのようなかたちが一般的になっていくのかもしれませんね。
最先端の技術を導入されているには驚きました。
最先端技術を制御する装置

いちご農園「ソレイユの杜」のイチゴについて

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福田
伊藤さんのイチゴの特徴を教えていただけますか?
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伊藤
ソレイユの杜では、主に「ミガキイチゴ」の栽培を行っております。品種は「とちおとめ」になります。
「ミガキイチゴ」というのは2011年に宮城県山元町で誕生した複数品種のイチゴの統一ブランドです。
品種ではなく栽培法・選果基準による果実の違いをブランド化したものとなります。
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福田
品種ではなく、作り方で分けるのですか!?
それは特徴的ですね。
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伊藤
イチゴにとって最も良い環境で育てられ、完熟で摘みとられたイチゴは、香り、甘さと酸味のバランス、ジューシーさと美しい形が特徴です。
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福田
普通は完熟で摘み取るわけではないのですか?
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伊藤
はい、我々はほぼ9割完熟のところで収穫しますが、一般的には流通経路の時間や果実の柔らかさの問題から、7割程度で収穫するようです。
この差が甘みや味に大きな差をうみます。
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福田
やはりこのあたりはGRAさんの販売網や流通のスピードがものをいうということでしょうか?
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伊藤
はい、収穫した「ミガキイチゴ」は研修先でもある株式会社GRAに納品し、主に日本全国の百貨店や果物販売店・スイーツ店・Yahoo!ショッピングや楽天市場のオンラインストアで販売されております。
この流通経路が確立されているので、店頭に並ぶのが早いんです。
そういうわけで、完熟に近い形で収穫しても痛む前に店頭に並べることが出来るということになります。
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福田
早く店頭に並べられるということで、美味しいイチゴが収穫できるわけですね。ちょっとの差ですが、それが大きな差になっていそうです。
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伊藤
はい。是非イチゴ好きの方には、その差を感じていただきたいと思っております。
完熟で摘まれたイチゴは本当に美味しいですよ!

いちご農園「ソレイユの杜」のこだわり

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福田
生産したイチゴは消費者の方の口に入るものであることから、その衛生面などの管理も大変かと思います。
そのあたりはどのように管理されていますか?
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伊藤
品質管理は食品の安全性を保つために化学合成農薬に依存しない新たな病害虫管理技術を導入しています。
UV-Bを夜間3時間照射することにより、病害虫でもある、うどんこ病に加えてハダニを抑制し、これらに対する農薬を70%以上削減できる防除体系を構築しています。
また衛生管理においては、イチゴの選果において、働く従業員に食品衛生についての知識を身につけてもらうための指導の徹底。清掃、マスクや帽子の正しい着用方法や手の洗い方、製品の扱い方や器具などの洗浄方法など、作業工程における様々な注意点をお互いに確認してから作業を開始しています。
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福田
やはり徹底した管理をされているんですね。
一緒に働く方とのコミュニケーションも大切になりそうです。
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伊藤
そうですね人間関係が悪ければ、どんなに制度が充実していた
としても従業員のモチベーションは上がりません。不安や不満を相談しやすい関係を築くことを大切にしています。
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福田
皆さんとても楽しそうに明るくお仕事されているのが印象的でした。
伊藤さんのこういった気遣いが職場の雰囲気に表れているのだと思います。

いちご農園「ソレイユの杜」の今後の展望

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福田
最後に、今後の展望について教えていただけますか?
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伊藤
大きなビジョンとしては
『太陽のように地域を明るく照らす存在になる』
ことを目指しています。

とにかく美味しいイチゴを食べてもらい多くの人々を笑顔にさせることが出来ればいいな思いながらと毎日仕事しています。
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福田
数値的な目標などもありますか?
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伊藤
数値的な目標としては、23アールの圃場において、反収5.5トン以上、収穫出来る栽培技術の向上、また作業時間の短縮(1人当たりの総労働時間は2,000時間以内)などですかね。
最新機器の導入や最先端ICT(情報通信技術)を活用するなど、今までにない農業スタイルをさらに進化させて行きたいと思っております。
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福田
具体的な数値目標もあるわけですね。
わたしたちも少しでもお力になれるように財務面などでサポートさせてもらえればと思っています。
そして一人でも多くの方に、伊藤さんの「ミガキイチゴ」で笑顔になっていただければと思います。
これからもよろしくお願いいたします。
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伊藤
はい、こちらこそ引き続きよろしくお願いいたします。
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福田
本日はありがとうございました。

いちご農園「ソレイユの杜」まとめ・ご紹介

山元町のイチゴ農園「ソレイユの杜」伊藤さんのご紹介でした。
わたしも何度か伊藤さんのイチゴを頂きましたが、とてもジューシーで、甘く、味が濃いことに驚きました。
特にジューシーなみずみずしさは一度味わったら癖になりそうです。
自宅用にもいただきましたが、あまりの美味しさにあっという間になくなりました、、汗

圃場では、訳ありイチゴ・加工用イチゴを直接販売することもあるそうです。
もし興味のある方は当事務所までご連絡ください。
一緒に農園の見学などしてみるのもいいかもしれません。