「社長を息子に譲るのはいつ頃がいいですか?」

事業承継に関する質問の中でも最も多い質問のひとつです。
こちらの答えは会社・経営者・後継者の状況によりますが、大切なことは必ず準備と計画が必要だということです。

社長と後継者の年齢や経験、会社の状況などを考慮して理想の交代時期を検討していきます。
M&Aなどで売却する場合は自分の引退時期で考えればいいのですが、親族に事業承継する場合はそう簡単ではありません。

今回は親族内に後継者候補がいる場合の事業承継を中心に、理想的な社長交代のタイミング検討事項について解説いたします。

必要な準備と計画とは?
―事業承継のベストタイミングを見つける―

社長交代には、準備計画が重要になってきます。
交代までに下記のような下準備をし、ベストなタイミングを見つける必要があります。

事業承継の準備と計画

① 社長交代時期の検討
② 株式移転の計画
③ 周知と環境づくり

では、それぞれ具体的に見ていきましょう。

社長交代時期の検討
―年齢と経験で判断する事業承継のタイミング―

まず最初に考慮すべきことは、社長ご自身と後継者の年齢です。

「社長」が最も力を発揮できる年齢とは

個人差はありますが社長として最も力を発揮できる年齢というのは、一般的には40代~60代くらいと言われています。

第一線で活躍する経営者仲間も充実している世代です。
この年齢の時期は会社の代表として思いっきり活躍すべき時期です。

その活躍すべき時期を大きく残して早めに引退してしまったり、逆に時期を逃していつまでも第一線にいるのは考えものです。
適切なタイミングを逃すと社内外の人間関係のバランスを崩したり、お互いの最大パワーが上手く活かされないことになってしまいます。

時期が早すぎるケース

● 経営者ご本人が 45歳 くらい
● 後継者が 20歳 くらい

時期が早すぎると言わざるを得ません。「せめてあと15年後ぐらいにどうですか?」という話になってしまいます。15年後であれば社長60歳・後継者35歳となりますので少し早いような気もしますが、十分検討可能な年齢となります。

時期が遅すぎるケース

● 経営者ご本人が 80歳 くらい
● 後継者が 55歳 くらい

残念ながら少し遅すぎるということになってしまいます。
社長ご本人が最も活躍できる時期を過ぎているのはもちろんですが、後継者の方も社長として活躍を開始する時期を少し逸しています。

平均的な社長交代の時期

平均的な社長交代の時期

● 経営者ご本人が65歳~75歳くらい
● 後継者が40歳~50歳くらい

これはあくまでも一般的かつ平均的なケースであり、もちろん当てはまらないケースもあります。

後継者の経験年数が少ない場合

例えば後継者の経験年数が少ないケースなどです。
社長になるためにはある程度その会社での経験が必要です。

1
後継者が社内で踏むべき段階①

ある程度従業員として働く

2
後継者が社内で踏むべき段階②

その後取締役になる

3
後継者が社内で踏むべき段階③

そして代表権を有する取締役になる

それ相応の準備期間が必要となります。
全く関係ない仕事をしていたご子息が後継ぎとなる場合などは当然のことながら業界の経験が不足しています。こういった場合には後継者が適切な年齢であっても社長就任の時期を急ぐ必要はありません。

社長交代時期について最も大事な判断基準はお二人の年齢後継者の経験ということになります。

株式移転の計画
―事業承継のタイミングと株式引き継ぎの関係―

後継者候補と社長交代の時期がだいたい決まった場合には、それに合わせて株式の名義変更を検討しなければなりません。

株式の移転には多額の税負担が生じることが多いです。
そこで顧問税理士などと相談しながら慎重に行う必要があります。

株式の名義変更をする時期

「社長交代と株式の名義変更は同時に行わなければならない」
と考えている方が多いのですが、実はそんなことはありません。

株式の名義変更には税負担を伴います。
そこで少しずつ非課税の範囲で贈与するなどの対策が行われます。
長期に渡り少しずつ行うケースが多いことになります。

株式の名義変更についての計画

まず1年間でどの程度の株式の移転ができるのかなどを検討します。
後継者が決定したらなるべく早く開始した方が有利となります。

そして社長交代の時期の持ち株割合などを計算して1年間でどれくらいの株式を贈与していくかなど計画します。

株式の名義変更についてはもう一つ大事なことがあります。

株式の渡し過ぎには注意

それは逆に株式を渡し過ぎないことです。
ある程度の株式数は後継者に所有してもらうことは大事ですが、社長交代以前にすべて渡してしまうのも危険です。

特例事業承継税制などの活用で有利に移転する方法もありますが、一度にすべて渡してしまうのはリスクがあるということになります。

このあたりは加減が難しいところですが、後継者の資質の判断とお二人の財産や相続などにも絡みます。
長期的かつ慎重な判断と計画が大切な項目です。

周知と環境づくり
―事業承継のタイミングと必要な土台づくり―

社長交代のタイミングと株式移転の目途がたったところで、次に行うべきことは社長交代の環境づくりです。社内、社外それぞれ重要な関係にある人や会社への周知が必要になります。
会社の後継ぎ候補について説明して理解してもらうことが大事です。

周知が必要なキーパーソン

● 社内・・・取締役、幹部社員など
● 社外・・・重要得意先、銀行、協力業者など

このあたりへ説明と理解があると社長交代は順調に進みます。
しかし重要なキーパーソンなどから理解を得られないと社長交代後の会社に悪影響を与えることになります。本当の社長交代の上手なタイミニングはこの土台作りが完了したときとも言えます。

社長交代と株式移転の計画に並行して、周辺への周知徹底による環境づくりも重要な準備となります。

事業承継のタイミング―まとめ―

事業承継のベストなタイミングについてご説明しました。
計画準備が重要なことがおわかりいただけたと思います。

1
社長交代時期の検討

現役社長と後継者の年齢及び後継者の経験を考慮して決定します。

2
株式移転の計画

そしてそれに合わせて株式移転の方法や時期、割合などの計画を立てます。

3
周知徹底と環境づくり

さらに並行して社内外への周知徹底と環境づくりが大事となります。

これらの下準備が完了したときにベストなタイミングが見つかります。

なかなか手をつけられずにズルズルと社長が現役を続けて、結局事業承継は出来なかったとならないように気をつけてください。