事業承継とは「自分の事業を他人に引き継ぐこと」です。

「誰に引き継ぐのか?どのように引き継ぐのか?
その選択により事業承継のかたちも複数の種類が生じることになります。

それではどのような種類の事業承継を選択するのがベストなのでしょうか。

その選択を正しく行うためには、まず事業承継の種類について正しく理解しておく必要があります。

今回は事業承継の種類についての基本的な説明をいたします。

「事業承継」の種類

事業承継のパターンは会社や経営者の状況によって様々ですが、大きく分けると「親族内承継」「親族外承継」があります。
そしてさらに「親族外承継」には、知り合いへの引き継ぎく知らない人への引き継ぎがあります。

事業承継のパターン

(1)「親族内承継」
(2)「親族外承継」
   ①知り合いへの引き継ぎ
   ②全く知らない人への引き継ぎ

事業承継は、このように様々なパターンがありますが、一般的には以下の順番で選択します。

1
一般的な選択の順番①

親族内承継」

2
一般的な選択の順番②

親族外承継」― 知り合い ―

3
一般的な選択の順番③

親族外承継」― 知らない人 ―

それでは、それぞれのパターンについて具体的にご説明いたします。

「親族内承継」―親族への事業承継―

まずは「親族内承継」です。
こちらは最も一般的な事業承継のかたちです。
ご子息や親族(甥っ子姪っ子、兄弟姉妹など)に引き継ぐ形式です。

事業承継を考え始めたら、まずは自分のご子息や親族の中から後継者を選定することを第一に考えるのではないでしょうか。
ご子息などの親族が事業を引き継いでくれることほど心強いことはありません。
うまく事業承継できて会社をさらに発展させることが出来れば、ご家族全員にとって最も有利な方法となります。

「親族内承継」は減少傾向

ただそれは後継者にふさわしい親族がいる場合に限られます。
最近では事業をご子息に継がせたくないと考える経営者も増えていますし、あまり積極的に親族内承継を勧めない専門家もいます。

「親族内承継」の減少理由

・ 後継者の資質の問題
・ 経営や事業承継の苦労
・ 社内外の調整 など

このように困難な点がたくさんあるため、親族内承継を行う会社の割合は年々減少しています。
親族内承継はつい最近まで最も一般的な事業承継の形式でしたが、残念ながら最近はそうでもなくなってきているのが現状です。

株式の引継ぎで税負担が高額になる可能性も

親族内承継の場合、株式の引き継ぎは無償で行われるのが一般的です。
生前であれば贈与、死亡後であれば相続・遺贈ということになります。

自社株は高額な評価となっていることが多いです。
その場合において自社株の引き継ぎ方を間違えると多額の贈与税や相続税の負担が生じてしまうことがあります。

親族内承継は有利な点もたくさんありますが、困難な部分や注意点もたくさんあります。

特に株式の引き継ぎには細心の注意が必要です。

「親族外承継」―親族以外への事業承継―

親族への事業承継が困難であると判断された場合は、親族以外へ事業承継をすることになります。

これを「親族外承継」といいます。

親族外承継にはさらに大きく分けて2つの種類があります。
知り合いに引き継ぐケース全く知らない人に引き継ぐケースです。

知り合いへの事業承継

知り合いに引き継ぐ具体例としては以下のようなケースが考えられます。

知り合いへの引継ぎ・具体例

・社内の役員や従業員
・親しくしている取引先
・同業の社長

社内の役員等へ引継ぐメリット

役員や従業員の場合は会社の業務にくわしいことから、事業承継がスムーズに進むというメリットがあります。

知り合いへの事業承継・注意点

親族外承継の場合においても、適任者の選別と選別から漏れた人への配慮、そして金銭的な問題など以下のような問題が生じるので注意が必要です。

知り合いへ引継ぐ場合の問題点

・ 社員同士の争いに発展する可能性
・ 借入の個人保証の問題
・ 株式を買取る資金の問題

親族であれば無償で株式を引き継ぐのが一般的ですが、他人となると売却するというケースもあり、その資金の問題が生じます。

全く知らない人への事業承継

そして最後の選択肢として、全く知らない人に引き継ぐ親族外承継があります。

こちらは文字通り、仲介会社などを通じて他人に売却することになります。
世間一般的には「M&A」などと言われています。

「M&A」のハードルは低くなっている

以前は一定金額以上の売買でないと仲介してもらえないのが普通でした。
しかし最近では経済産業省が事業承継に力を入れていることから、僅かな金額でも仲介してくれる専門機関などが出来ています。

ちょっと前でしたら売却の仲介を諦めていた場合でも、最近は売却できる可能性が出てきたことになります。

売却のデメリット

売却交渉の難しさ

お互いに納得のできる条件で契約して引き継ぎが行われることになりますが、合意に至るまでは結構大変で、多少の妥協も必要になります。

売却後の寂しさ

売却してしまえばその後はすべてが無くなるというのがこのパターンです。
サッパリして良いという考え方もありますが、少し寂しい気もします。

解決策としては、株式を売却して代表権も返上したうえで、その会社に顧問や相談役などで残るという方法があります。
これはもちろん会社を引き継いだ方との条件交渉になりますが、そのようにして会社を引き渡している経営者の方もたくさんいます。
一つの選択肢として有効な方法ではないでしょうか。

「事業承継」の種類―まとめ―

事業承継の種類は大きく分けて「親族内承継」「親族外承継の2つがあります。
さらに「親族外承継」は引き継ぐ相手について、知ってる人か知らない人かの違いにより2つに分かれます。

株式の引き継ぎについては、「親族内承継」は無償「親族外承継」は有償といのが通常のパターンです。

まずはこれらの種類とそれぞれには注意点があることをご理解いただき、ご自身にとって選択可能な方法をご検討いただければと思います。