今年最も注目されている補助金である「事業再構築補助金」の公募が先週の金曜日(3月26日)に開始されました。

発表となった内容を簡単にまとめました。
ウィズコロナ・ポストコロナを見据えて、新たな事業展開をお考えの方は内容をご確認いただければと思います。

事業再構築補助金の目的

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化しています。
当面は従来事業の需要や売上の回復が期待できない状況の事業者も多いと思います。

そんな中、ウィズコロナ・ポストコロナ時代への経済社会の変化に対応するために、

・新分野展開
・業態転換
・事業・業種転換
・事業再編
・これらの取組を通じた規模の拡大等


これらの思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援しようというものです。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金には、数種類の枠が用意されています。
枠の種類ごとに概要をお伝えします。

通常枠

新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取
組を通じた規模の拡大等を目指す中小企業等の新たな挑戦を支援するものです。

補助金額

・中小企業者等:100万円 ~ 6,000万円
・中堅企業等 :100万円 ~ 8,000万円

補助率

・中小企業者等 2/3
・中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)

補助要件

1.再構築する事業が、事業再構築指針に示す「再構築事業」に該当すること。

2.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。

3.経済産業省が示す事業再構築指針に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等支援機関等と共同で策定すること。
補助金額3,000万円を超える案件は金融機関(ファンド等を含む)及び認定経営革新等支援機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみ)と事業計画を策定すること。

4.事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%以上、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上の増加を見込む事業計画を策定すること。


卒業枠

事業再構築を通じて、資本金又は従業員を増やし、3年~5年の事業計画期間内に中小企業者等から中堅・大企業等へ成長する中小企業者等が行う事業再構築を支援するものです。(すべての公募回の合計で、400 社限定)

補助金額

・中小企業者等:6,000万円 ~ 1億円

補助率

・中小企業者等 2/3

補助要件

1.再構築する事業が、事業再構築指針に示す「再構築事業」に該当すること。

2.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。

3.経済産業省が示す事業再構築指針に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)と策定していること。

4.事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%以上、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上の増加を見込む事業計画を策定すること。

5.事業計画期間内に、事業再編、新規設備投資、グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、「2.補助対象事業者」に定める中小企業者等の定義から外れ、中堅・大企業等に成長すること。

グローバルV字回復枠

事業再構築を通じて、コロナの影響で大きく減少した売上を V 字回復させる中堅企業等を支援するものです。(すべての公募回の合計で、100 社限定)

補助金額

中堅企業等 :8,000万円 ~ 1億円

補助率

中堅企業等 1/2

補助要件

1.再構築する事業が、事業再構築指針に示す「再構築事業」に該当すること。

2.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して15%以上減少していること。

3.経済産業省が示す事業再構築指針に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)と策定していること。

4.事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均5.0%以上、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上の増加を見込む事業計画を策定すること。

5.グローバル展開を果たす事業であること。

緊急事態宣言特別枠

令和3年の国による緊急事態宣言により令和3年1月から3月にかけて、飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けた事業者に対して支援するものです。要件に合致すれば、地域や業種は問いません。

補助金額

中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数5人以下】 100 万円 ~ 500 万円
【従業員数6~20 人】 100 万円 ~ 1,000 万円
【従業員数21人以上】 100万円 ~ 1,500万円

補助率

・中小企業者等 3/4
・中堅企業等 2/3

補助要件

1.再構築する事業が、事業再構築指針に示す「再構築事業」に該当すること。

2.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。

3.令和 3 年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等による影響を受けたことにより、令和3年 1 月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していること。

4.事業計画を認定経営革新等支援機関と策定していること

5.事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%以上、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上の増加を見込む事業計画を策定すること。

事業再構築の定義


ここから具体的な項目の詳細について簡単に説明を加えていきます。
まずは「事業再構築」の定義についてです。
「事業再構築」がなされなければこの補助金の対象にはなりません。

新分野展開

中小企業等が主たる業種又は主たる事業を変更することなく、新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、新たな市場に進出すること。

事業転換

中小企業等が新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること。

業種転換

中小企業等が新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更すること。

業態転換

製品又は商品若しくはサービスの製造方法又は提供方法を相当程度変更すること。

事業再編

会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うこと。

事業再構築補助金の補助対象経費

補助金の対象となる経費はどのようなものなのでしょうか?
ひとつひとつ種類ごとに簡単にみていきたいと思います。

建物費

1.専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費
2.補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
3.補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費

機械装置・システム構築費(リース料を含む)

1.専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費
2.専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費
3.上記と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費

技術導入費

本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費

専門家経費

本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費

運搬費

運搬料、宅配・郵送料等に要する経費

クラウドサービス利用費

クラウドサービスの利用に関する経費

外注費

本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費

知的財産権等関連経費

新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費


広告宣伝・販売促進費

本事業で開発又は提供する製品・サービスに係る広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等に係る経費

研修費

本事業の遂行のために必要な教育訓練や講座受講等に係る経費

海外旅費(卒業枠、グローバルV字回復枠のみ)

海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費

対象とならない経費

・事務所等に係る家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
・ フランチャイズ加盟料
・ 電話代、インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯
経費は除く)
・ 商品券等の金券
・ 販売する商品の原材料費、文房具などの事務用品等の消耗品代、雑誌購読料、新聞代、
団体等の会費
・ 飲食、娯楽、接待等の費用
・ 不動産の購入費、株式の購入費、自動車等車両(事業所内や作業所内のみで走行し、自
動車登録番号がなく、公道を自走することができないものを除く)の購入費・修理費・
車検費用
・ 税務申告、決算書作成等のために税理士、公認会計士等に支払う費用及び訴訟等のため
の弁護士費用
・ 収入印紙
・ 振込等手数料(代引手数料を含む)及び両替手数料
・ 公租公課(消費税及び地方消費税額(以下「消費税等」という)等)
・ 各種保険料
・ 借入金などの支払利息及び遅延損害金
・ 事業計画書・申請書・報告書等の事務局に提出する書類作成・提出に係る費用
・ 汎用性があり、目的外使用になり得るもの(例えば、事務用のパソコン、プリンタ、文
書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン及びデジタル複合機、家具等)
の購入費
・ 中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が明確
でない中古品の購入費(3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見
積もりを取得している場合等を除く)
・ 事業に係る自社の人件費、旅費
・ 上記のほか、公的な資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費

補助対象経費・その他注意点

・50万円以上のものを購入する場合は、相見積もりが必要
・経費の額は消費税抜にて計算

事業再構築補助金の応募・手続き

公募期間

第1回の公募スケジュールは以下のとおりです。

公募開始:令和3年3月26日(金)
申請受付:令和3年4月15日(木)予定
応募締切:令和3年4月30日(金)18:00

今年中に4回ほど募集が行われる見込みです。

申請方法

申請方法は電子申請システムのみで受け付けされます。
申請には原則GビズIDプライムアカウントの取得が必要です。
未取得の方は、こちらから速やかに利用登録を行ってください。

事前着手申請手続き

補助事業は、交付決定後に行うこととしており、交付決定前に事業開始された場合は、原則として補助金の交付対象とはなりません。
ただし、本事業においては、早期の事業再構築を図っていただくために必要となる経費について、補助金の交付決定前であっても事務局から事前着手の承認を受けた場合は、令和3年2月15日以降に購入契約(発注)等を行った事業に要する経費も補助対象経費とすることができます。
交付決定前に事業着手が承認された場合であっても、補助金の採択を約束するものではありません。また、令和3年2月15日より前に行われた購入契約(発注)等については、補助対象経費として認められませんので、ご注意ください。

・ 受付期間 令和3年3月26日(金)~交付決定日まで

応募される方は、本事業の申請とは別に、事前着手するための申請を事業再構築補助金事務局にメールでご提出ください。
事前着手受付メールアドレス:houkoku@jigyo-saikouchiku.info

添付書類

申請する際に必要な添付書類は以下の通りです。

事業計画書

最大15ページで作成してくださいとのことです。
申請段階ではこちらの作成が最も重要な項目となりそうです。

認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書

事業計画書の策定における認定経営革新等支援機関等の関与を確認するもの

コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類

申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高と、コロナ以前の同3か月の合計売上高が確認できる資料

決算書

直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、
製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表

ミラサポplus「活動レポート(ローカルベンチマーク)」の事業財務情報

中小企業向け補助金 総合支援サイト ミラサポ plus」の「電子申請サポート」で作成した事業財務情報

海外事業の準備状況を示す書類(卒業枠(グローバル展開を実施する場合に限る)・グローバルV字回復枠のみ)


・海外直接投資→海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料
・海外市場開拓→海外市場の具体的な想定顧客が分かる資料
・インバウンド市場開拓→インバウンド市場の具体的な想定顧客が分かる資料
・海外事業者との共同事業→共同研究契約書又は業務提携契約書(検討中の案を含む) 等

従業員数を示す書類(緊急事態宣言特別枠のみ)

・労働基準法に基づく労働者名簿の写し

審査加点のための書類

1.令和3年の国による緊急事態宣言による影響であることの誓約書
 
令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動
の自粛等により影響を受けたことにより、2021年1月~3月のいずれかの月の売上
高が対前年(又は対前々年)同月比で30%以上減少していることを証明する書類

2.2021年1月~3月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約
料)が同期間に受給した協力金の額を上回ることを証明する書類

事業再構築補助金申請後の注意点と義務

補助金採択後に、事業遂行を中止した場合や資産を売却した場合には、報告の義務が生じます。
この事業の内容が明瞭に区分できる適正な帳簿書類を作成して、求めに応じて報告書を提出を求められることもあります。
事業計画が達成されるかどうかの管理も必要となりそうです。

事業再構築補助金・まとめ

ここまでもおおまかにまとめたものになっていますが、最後に本当に重要なポイントのみまとめておきたいと思います。
ご確認ください。

・10%の売上減少要件がある
・事業再構築を行うこと
・条件さえ整えば最高補助金額は1億円
・補助率は通常2/3であり、1/3の実質負担がある
・認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
 (3,000万円を超える場合などは金融機関も必要)
・事前着手申請をすれば令和3年2月15日以降の計画と経費は補助対象になる
・通常枠のほかにも卒業枠や緊急事態宣言特別枠などがある
・申し込み期間は令和3年4月15日~令和3年4月30日18時まで
・申請は電子申請、GビズIDが必要
・補助を受けたあとも報告などの義務がある

綿密な計画と実行が必要になるうえに、計画後の報告もあります。
ハードルはかなり高いものとなり、真剣に取り組む必要があります。
事業再構築を本気でお考えの方は、ご検討いただければと思います。

さらなる詳細はこちらをご確認ください。